ナンセンスな世界を生きる


やっと読んだ。「楢山節考」は前々から読もうと思っていた小説のひとつで、直接的な引き金は「居残りドリル」のエントリーだった。独特のリズムとユーモアのある文体がすごくて、一語一語を読み飛ばさないようにゆっくりと読む姿勢は、昨日のスティーヴン・キングとは大違いだ(別にキングが悪いって言ってるわけじゃない)。現代を生きる自分からすればナンセンスに思えてならない描写(喜んで歯を折る老婆の姿など)の連続なんだけど、その世界観の強度には驚くばかり。もしかしたらいつの時代も人間はナンセンスな世界を当たり前のように生きているのかもしれなくて、そのナンセンスな世界を健気に生きたおりんとその息子の最後の姿には、やっぱ泣いた。

週末に野毛山動物園で「動物園物語」の公演を観る機会を得たので、風呂に浸かりながらそれを読む。先週、東京デスロックの「WALTZ MACBETH」を観たんだけど、終始、舞台の上で何が起こっているのかまったくわからず、ただ椅子取りゲームに疲れている役者がいるばかりで、それならば前もって原作を読み直しておけばよかったと後悔したからだ(マクベスのことはよくわからなかったけど刺激的な舞台だった)。おそらく動物園で「動物園物語」を観る機会はこの先一生ないだろうから、気合いを入れて臨みたい。