2月12日〜14日

スイングバイ」の稽古が盛り上がってます。初日の15日が完売となりましたので、まだご予約がお済みでない方はお早めに。チケット予約フォームはこちらです。さて、2週間前に高校生を対象にワークショップを実施したんですが、自分が主体となって活動した数少ない出来事なので、いちおう記録しとこうと思います。

■2月12日 WSデモ2

デモンストレーション2回目。今回は桜美林大学の学生に受けてもらう。ぼくも桜美林に通っていたけど、卒業してからもう4年も経つので、直接の知り合いはほとんどいない。だけど、一昨年、相模原のある高校で演劇部の嘱託顧問をしていたことがあって、そのときの生徒が桜美林に入学してこのワークショップのデモに参加してくれていて、ちょっと感慨深かった。
で、肝心のデモはというと失敗だった。ここで問題点がはっきりしたのはよかったけど、単なる準備不足が原因でうまく回らなかったところもあったので、せっかく参加してくれた大学生には申し訳なかった。ワークショップ終了後のフィードバックで、学生から「テンション上げた方がいい」というアドバイスを受けて、その場では「絶対上げない」と意味不明の意地を張ったんだけど、さすがに上げなきゃだなこれは。ワークショップ中、ずっとぶつぶつ言い訳していたような気がする。そんなワークショップ受けたくないよ。
キャンパスが10時で閉館してしまったので、近隣のファミリーレストランに行って、アシスタントのモンチと吉田さん、ワークショップ企画者の山田くんでミーティング。デモが明らかに失敗していたので、緊迫した空気のなか、フライドポテトをつまむ。フィードバックで学生から貴重な意見をもらえたのがとても助かった。
こうやって深夜のファミレスでミーティングしていると、大学4年のときの授業でオリジナルワークショップを作ったことを思い出す。授業時間外の課題が多くて、深夜のファミレスのミーティング以外にも深夜の公園でリハーサルしたり、かなりハードな授業だったんだけど、なんだかんだで大学で一番記憶に残っている授業かも。ちなみにそのとき作ったWSは「かりあげクン」「コボちゃん」とか植田まさしの4コマ漫画をひたすら舞台化するワークショップだった。

■2月14日 演劇WS「いまここにいるというスリル〜演技と空気〜」

今回のワークショップは、冷泉彰彦『「関係の空気」「場の空気」』と山本七平『「空気」の研究』を参考に、自分なりに「空気」という現象と演劇をからめた内容で、前半では2人間で生じる「関係の空気」を作り、後半では3人以上の場で生じる「場の空気」を作って壊すという寸劇を作ってもらう。
「関係の空気」は、ようは友だち同士の会話で、情報を共有しているから言葉を省略しても伝わる共感性の高いコミュニケーション。「場の空気」は、ようは「KY」のあれ。高校生にとって「空気」はとても身近な現象だから受け入れやすいだろうと思う反面、身近すぎて演じづらいかもしれないという気がかりはあった。だけど、実際にやってみたら前半も後半も見事にこなしていて、高校生はぼくらが予想していた以上に大人だった。
後半は、こちらでシチュエーションと登場人物、4コマ漫画のように起承転結にわかれたプロットを提示して集団創作をしてもらったんだけど、どれもよく出来ていて面白かった。
シチュエーションは4パターンあって、ひとつはテスト期間中の教室に生徒が集まってきて、「承」のコマで「テスト期間中だけど遊びに行こう!」という空気が生まれて、「転」のコマで「テスト期間中だからダメだよ!」と1人が空気に水を差す、といったシンプルなもの。空気の生み出し方、空気の壊し方、空気が壊れた後がこの寸劇のポイントになるわけだけど、みんな普段の盛り上がりとか気まずさとかを丁寧に演じ切っていた。「結」のコマで、空気を壊して落ち込んでいる生徒に今まで親しくなかった生徒が優しく声をかけるシーンでは思わず泣きそうになった。
演技をすることで、友だちとわいわいしゃべる楽しさと、価値観の違うクラスメイトとしゃべる楽しさに意識的になってもらって、空気を壊すときのわずかな勇気、壊されたときのわずかな忍耐、といった空気に対する捉え方を考えてもらえたんじゃないかなと思う。ぼくとしてはワークショップ講師という立場を忘れて、後半の集団創作を観客として楽しめてとても満足だった。このワークショップはこれからもどこかでやりたい。