5月17日〜6月10日

最近、ずっと日記を更新できていなかったのは、別にドラクエ5にハマってたからではなくて、村上春樹の『1Q84』と鹿島田真希の『ゼロの王国』の2冊の長編小説にハマってたからで、先週末に『1Q84』の方は読み終えた。近所の本屋も『1Q84』の在庫がない状態が続いて、なんだか記録的な売れ行きらしいけど、このわいわい盛り上がってそれぞれが没頭してる感じは、小学生のときのドラクエブームを思い出す。もしかしたらいまさらながらドラクエ5を買い求めたのは、その「お祭り」みたいなものに対するノスタルジーだったのかもしれなくて、だとしたらその欲は『1Q84』が見事に満たしてくれた。中古のプレイステーションは早くも埃をかぶりつつある…。で『ゼロの王国』の方はというと、「この作者、頭おかしー」と思うくらい愉快で深刻で最高に面白い。

5月17日 金氏徹平

横浜美術館で『金氏徹平:溶け出す都市、空白の森』。作品は「ブリコラージュ」「コラージュ」と呼ばれる手法で作られた、既成のプラスチック製品を積み上げた彫刻だったり、雑誌やぬり絵の切り抜きを貼付けた絵画だったり。白い樹脂が塗りたくってある彫刻は、まるで雪をかぶった建造物のようにも見えて、一見、すごく幻想的なんだけど、よく見てみると、ホースだったり、歯ブラシだったり、日常生活でよく見かける既成製品がそのままの形で組み込まれている。この、幻想的なんだけど現実的でもある、すんなり収まりきらないゴツゴツした感触がすごく面白かった。最初に頭の中に幻想的な世界があって、それをもとに既成製品を組み合わせて作り上げるんじゃなくて、たぶん、頭の中が真っ白な状態で既成製品をひとつ置いて、そこにまた何かを順々に組み合わせていくことで、結果的に幻想的な世界のようにも見える彫刻が生まれたんじゃないか、という気がする。ようは精度の高い子どものオモチャ遊びみたいな感じで、なんかいろいろ考えるきっかけになった。

5月23日 ハックル

TSUTAYAで『ハックル』のDVDを借りる。パッケージがいかにもミニシアター系のおしゃれ映画に見えて、なんか今日はそんな気分だった、というそれだけの理由で借りたんだけど、これはすごい。予備知識なしで観たからかもしれないけど、これはすごい。なので、これから観るひとのために詳しくは書かないでおくけど、といっても、ある意味、全然すごくないので、あまり期待はしない方がいいと思う。どっちなんだ、と思うかもしれないけど、漫画でいえば横山裕一のような感じで、演劇でいえばポツドールのある一連の作品群のような感じ。「言語」から解放された作品は刺激的でありながら心地よい。

5月31日 柳家小三治

船橋市民文化ホールで『小三治・鶴光二人会』。本格的な落語は初めて。本格的に落語にハマりそう。落語家を見るといつも「風格だなぁ」と思う。生で柳家小三治の落語を聴けてよかった。次は立川談春柳家喬太郎を見たい。

6月1日 原口典之展

BankART Studio NYKで『原口典之展 社会と物質』。バイト帰り、みなとみらい線が人身事故でしばらく運休になったので、前々から興味があった展覧会へ。受付をすませるとエレベーターで3階へ誘導されるんだけど、3階スペースに足を踏み入れた瞬間、その退廃的な雰囲気に打ちのめされる。BankART Studio NYKは倉庫を改修したアートスペースなんだけど、3階に関してはほとんど手をつけていないようで、まさに荒廃した倉庫そのもの。しかも他の客は一人もいない。監視員が一人いるだけ。そんな場所に実寸大の戦闘機の半身が展示され、奥へ進むとオイルが溜まったプールが設置されていて、もちろんオイルプールは強烈なオイル臭を放つ。一面に広がるオイルの黒光りに映る自分の姿を眺めていたら、急に立ちくらみがしてそのまま倒れそうになる。なんか、すごい強烈。はめ込み窓からは西日が差し、外はまさにマジックアワーの光景で、横浜の街は開港博で盛り上がっている。たしかに自分と社会と真っ正面から向き合える貴重な体験だった。

6月10日 チェンチ一族

今回はリーディング公演という、戯曲を持ちながら台詞を発するという、特殊な公演形式なんだけど、神里さんがこの公演形式でいろいろと遊んでいて面白い。あと今回はいろいろなタイプの俳優さんが集まっているので、それも面白い。初見の段階で戯曲をすらすら読めるひとや、すらすらというよりもはや「演技」ができてしまっているひとを見ると、自分がもともとは俳優に向いていない人間なんだと思い知らされる。初見の戯曲が苦手だし、今回みたいに海外の戯曲となるとセンテンスが長かったり、熟語が多かったりで、かなりしどろもどろになる。音痴だし、引っ込み思案だし、すぐお腹壊すし。ということで、というか突然だけど、これからは筋トレしよう!